祝いの翌日


数年前のこの日、夫の誕生日の翌日。
私は法に裁かれる事ない罪を犯した。

この国では合法とみなされる罪。
自らの体内に芽生えた生命を、自らの意志によって殺めるという罪。

ケ−キを食べ、ワインを飲み、夫が産まれて来た事を祝った翌日。
麻酔に眠り、生れ来ようとする生命を奪った。

ただの一度も「産みたい」とは言えないまま。

いっそ裁いて欲しいと願った。
せめて、のたうち回る程の痛みを与えて欲しいと。

それなのに、痛みもなく、裁かれる事もなく、誰に責められるでもなく、ただ淡々とその日は過ぎて行った。

罪は罪として、裁かれるべきである。
それがどれほど小さな罪であろうと。

だからその日、一生、この罪を背負って行こうと決めた。

あれから数年。
私の祈りは変わらない。

どうか私の罪をお許し下さい。

祈っても祈っても、届く事のない願い。

私はきっと、一生、私を許さない。

ケーキを食べ、ワインを飲み、夫が産まれて来た事を祝った翌日。
痣になった古傷に、私はもう一度傷を刻み込む。

2003.12.4

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