Image:by Nao

My Fairy Lady Part2

(9月30日。2日後に受ける手術の為、念入りにシャンプーを。)

彼女のお風呂好きは、度を越しているかもしれない。犬は飼い主に似る、というが、こんなところまで似るものだろうかと、不思議になる程である。
この家に越してきた時、何よりもお風呂場の大きさに喜んだのは、私だけではなかったようだ。
彼女の為に買ったベビーバスを風呂場に持ち込み、湯を張る。尻尾をぶんぶん振り回し、その様子を眺めている彼女は、一体何を考えているのだろう。
「きゃぁ〜、お風呂だゎ♪ ね〜、まだなの? まだ〜?」とでも思っているのだろうか。それとも、「けけけ、今日はわたくし、お姫さま扱いになるのね♪」等と、親バカな私達を見抜き、嘲笑っているのだろうか・・・

どちらにせよ、彼女はベビーバスの湯を、何度かあたためる作業を私に強制することも、忘れない。
「クゥ
〜ン(お湯がぬるくなったわよ〜)」
その声で、隣室(キッチン)で用事をしている私は、テケテケテケと走って行って、お湯を足してやる。
良い湯加減になると、彼女は鼻を鳴らしながら、ウトウトとし始める。
その姿が余りにも可愛くて、私は素直に奴隷と化しているが、可愛くなければしばき倒すところだ。

約1時間程、そんな事を繰り返し、ようやくシャンプーが終わると、彼女のハイテンションが始まる。
フワフワと置かれた、何枚ものバスタオルで、自らの身体を器用に拭き、早くドライヤーを持って来い、とせがむ。

しかし、9月30日のシャンプーだけは違った。
ベビーバスに跳んで入る事も、お湯をせがむ事も、自分で出る事も、自分で身体を拭く事も、何もできなくなっていたのである。
「お風呂入ろっか!」
という私の声に、ヨタヨタと立ち上がり、風呂場までは歩いてきたものの、そこでまたグッタリと座り込んでしまったのである。
私はレディを抱き上げ、できるだけいつもと同じように湯を足し、いつもと同じように1時間程湯舟でくつろぐ彼女を、たまに覗くだけにしておいた。

しかし彼女のグッタリ感は、時間を追う事に増して行き、私の心臓はバクバクと波打ち、今にも揃って失神しそうなまでに、緊張感は高まっていた。
掛り付けだったお医者様の声が、その時ハッキリと聞こえた気がする。
「麻酔によって、目覚めない犬が余りにも多い事を、ご存知ですか?」
その時の私は、手術を受けさせるか否か、また迷い始めていた。
彼女はそんな事を知る由もないが、きっと普段とは違う何かを、犬の本能とやらで嗅ぎとっていたのかもしれない。

つづく

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