夢を見た。
目覚めても尚、尾を引くような夢だった。
私は起き上がり、カーテンを勢い良く開け、隣の家を見た。
相変わらず、“分譲中”の幟(のぼり)が、風に揺らめいていた。
洗面台の鏡に映った私の顔は青白く、無理に笑顔を作ってみても、その全てから哀しみが滲み出ていた。
あなたはとても、感受性の強い方だけれど、瞬間的に表現できる質ではなく、ゆっくりと、静かに、そしてとても深く滲み出す方だ、とある人から言われた事があった。
ゆっくりと、静かに、そしてとても深く・・・
“分譲中”の、のぼりが揚がったその場所には、4件もの家が建つ予定だ、と母から聞かされた。
4件の家に移り住んでくる人達よりも、私にとって大切なもの。
私は整備されたその土地にしゃがみ込み、現実ではない夢の世界を、もう一度漂っていた。
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