君が好きだと言ったから、今日は記念日という唄を詠んだ、上流歌人がいた。
「こんな気持ち、素敵だと思わないか」
当時担任兼、国語教師だった先生の言葉に、思わず私は吹き出した。
「絶対10歳は誤魔化してる」
そんな失敬な噂で取り巻かれていた先生の、余りに不似合いな言葉は“箸の転んだも可笑しい年頃”の私を爆笑させた。
「その内解る。お前達にも」
それ以来、先生の口からロマンチックな言葉を聞く事はなくなった。
私には場違いなところで、とてもタイミングよく笑い出す変な癖がある。
大抵の人は笑いを堪える、という能力を持ち合わせているようだが、私にはそれが欠乏しているのかもしれない。
笑ってはいけないと思うと、肩と胸の辺りがヒクヒクしてくる。
人が笑いを堪えているのを見ると、おかしくて堪らない。
で、笑ってしまうのである。
失礼無礼極まりない話だが、こればかりはどうしようもない。
それから一年後、先生は結婚されたと聞いた。