Phot : Ume blossoms by Hir

記念日


君が好きだと言ったから、今日は記念日という唄を詠んだ、上流歌人がいた。

「こんな気持ち、素敵だと思わないか」
当時担任兼、国語教師だった先生の言葉に、思わず私は吹き出した。

「絶対10歳は誤魔化してる」
そんな失敬な噂で取り巻かれていた先生の、余りに不似合いな言葉は“箸の転んだも可笑しい年頃”の私を爆笑させた。

「その内解る。お前達にも」
それ以来、先生の口からロマンチックな言葉を聞く事はなくなった。

私には場違いなところで、とてもタイミングよく笑い出す変な癖がある。
大抵の人は笑いを堪える、という能力を持ち合わせているようだが、私にはそれが欠乏しているのかもしれない。
笑ってはいけないと思うと、肩と胸の辺りがヒクヒクしてくる。
人が笑いを堪えているのを見ると、おかしくて堪らない。
で、笑ってしまうのである。
失礼無礼極まりない話だが、こればかりはどうしようもない。

それから一年後、先生は結婚されたと聞いた。

「もう春だなぁ」
何年か後、ある男が、こんな事を言った。
まだ肌寒い、枯れ木に埋もれた公園で・・・
彼の視線の先にあったのは、今にも破裂しそうな梅のつぼみだった。

私は毎年想い出す。

「こんな気持ち、素敵だと思わないか」

梅の季節
桜の季節
新緑の季節
色とりどり花の季節
熱風の季節
紅葉の季節
寒風の季節
雪の季節

飽きる事ない日本の四季には、様々な記念日がある。

私は現在、あの頃の先生と同じ歳を経て、あの頃の先生と同じとしの中にいる。

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