これは以前、私が友人に当てて書いた手紙にあった文だ、と友人が久方ぶりに手紙をよこした。 何かの本の一文か、映画の台詞か、それとも単なる走り書きか・・・それは当の本人にも分らない。
恋をすると、詩人になる。 心の中に色んな感情が溢れだし、それを誰かに愚痴ったり、悶々と思い悩んだり、相手にぶつける人もいるだろう。
私は思いっきり、相手にぶつけるタイプだった。
しかし、直球玉を真正面から受け止めてくれる奇特な男性は、そうそういない。
相手がカーブサインを出しているにも関わらず、直球ストレートをど真ん中目掛け投げ付けて、相手を骨折させてしまったこともしばしばある。
性格が屈折しまくっているように見えるから、相手は変化球が来ると思い込むのだ、だから彼にも非があるのだよ。となだめられることもあったけれど、自分の投げた球で相手に大怪我を負わせてしまったことよりも、私にとっては、相手が受け止めてくれなかった事の方がショックだったりしたものだ。
私には、言葉にできない感情を、文字にする習慣があった。それは決して誰かに見せる為ではなく、いつか振り返る為のものであったのかもしれない。
しかしある時、リセットしたくて、全てを白紙に戻したくて、私は全てを捨ててしまった。書き留めた感情の羅列は、美しい想い出の欠片だと知りながら。
私が失ったのは、その頃の若さでも、想い出でもない。
消せない過去が残り、消したいと望んだ過去が形成した私が残ったのに、あまりにも美しい感情だけが失われてしまったのかもしれない。