あなたはいつも正直に生きてきたから・・・
私はその言葉に落胆した。
本当は全然正直になんて生きてきてない。
いつも自分に嘘をついてきたのだから。
本当は元気じゃないのに、元気張ってみたり、本当はちっとも大丈夫なんかじゃないのに、大丈夫大丈夫って言ってみたり・・・
いつの頃からか二番目に欲しいものを、さも一番欲しいもののように求めたりするようになってもいた。
好きでもない人と付合ってみたり、淋しい時に淋しいと言えなくて、その淋しさを他の人にぶつけてみたり・・・
人は歳を経る毎に、色んな事を学び、色んな知恵を得るけれど、決して賢くなるわけではない、と私は思う。
ずるくなり、臆病になり、正直ではなくなる。
そうやって自分を守る術を、身につけていくものなのかもしれない。
傷付いた人程、優しくなれるというけれど、私はそうは思わない。
良い慰め方だとは思うけれど、傷付く度に人は、捻くれていくのものだ。
丁度私がそうであったように・・・
そして心の護身術を、また一つ増やすのだ。
もしも私が、幼い頃の自分に逢う事ができるなら、一つだけ伝えたい事がある。
他人に正直に生きるより、自分に正直に生きなさい。