約2年程前、私は5年続けたアトリエを閉めた。
5年という歳月はあっという間で、それでいて、長過ぎた。
5年間、私は仕事に、生活に追い捲くられていた。
アトリエ代の為に、陶芸教室なるものも開いていた。
朝から働き詰めで、気が付くと目の前に生徒さんがいて「え? もう1週間たったの?」ということも珍しくはなかった。
その頃の私は幾つもの仕事を掛け持ちしていた。
何がしたいわけでもなく、ただアトリエを維持する為だけだったかもしれない。
定期的に私の口座に振り込まれるお金は、釉薬や光熱費に回り、廻りの女の子達がショッピングや、海外旅行に出かけるのを、指をくわえて眺めていた。
投資や出資の話がなくもなかった。
スポンサーに、という有難い申し出もあった。
しかし、私は『自分の力でやる』ことに、異常なまでにこだわっていた。
私の人生にレールを敷いた父に反発し、家を飛び出してからというもの、私は私の力で生きて行く事だけにこだわっていた。
アトリエを閉めると決めた時、私の心の中は敗北感で一杯だった。
『ここまでか・・・』
転々とはしたものの、就職すればそれなりに仕事をこなし、それなりのお給料を貰えていたお陰で、それなりの貯蓄があった。
しかし預金も底を付き、挙げ句の果てには『-』が付き始めた。
言わば、借金ができた、ということである。
きっと解ってくれる人はいる。
私が我武者らにやってきた事を、応援してくれる人が、必ずいる。
確かにいた。
いつも、どんな時も、私を支え、私を守ってくれる人が・・・
それなのに何故・・・
私は1つの賭けに負けた。
私は拭いきれない傷を負った。
解ってくれる人ばかりではない。
そんな事は百も承知だったはずなのに、私は折れてしまった。
何故・・・
私はその答えを探す為に、あの日アトリエを閉めた。
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